ラッカセイ 〈119号 #57〉

ラッカセイ

 現代日本での呼称は、「ピーナッツ」が一般的です。「落花生」は、黄色い一日だけの花が落ち、そのあとから子房柄といわれる細い茎状ものが地面に向かって伸びます。その先に実がつくのですが、花が落ちたあたりの地中に実ができていることから、この名になったと言われます。漢名です。南米アンデス地方の原産ですが、江戸時代の日本に伝来したルートから付いた名前「南京豆」もよく使われます。植物としての標準の和名はこの「南京豆」になるそうです。
 「ピーナッツ」には”ナッツ”が使われていますから、木の実などの仲間のように思いがちですが、「南京豆」とするように、豆の一種です。

 やはり面白いのが、子房柄の先が地面に向かって伸びてゆき、地中に差し込まれさらに進み、その先4センチ前後の深さにあの小さいヒョウタンのような何かユーモラスな形のサヤを付けるという、ちょっと不思議な生態です。
 その姿を見たくて十数年前に初めて落花生を栽培してみました。一本の子房柄の先にサヤが一つなので、想像以上の本数の、針金で落花生の株を支えるかのように見える細い茎のようなものが、地面に突き刺さっていきます。


ラッカセイ栽培

 その時の写真です。中央に見える子房柄の先端がちょうど地面に届いて触れている、八月半ばの画像です。その奥の方に、右手の方にも何本かの地中に突き刺さった子房柄が見えます。
 もう一枚は、左の写真から2ヵ月と少し経って収穫を迎えた時です。

 今年は植えませんでしたが、昨年はコンパニオンプランツとして数ヵ所にだけ種を播きました。あるじになる作物の勢いにやや負けてしまったのと野ネズミの被害で、あまり収穫はなりませんでした。落花生もマメ科の植物ですから、チッ素を集める根粒菌を作り土を豊かにし、近くの作物の成長を助ける働きを持ちます。こういったマメ科の植物やネギなどを、相性を見ながら一緒にかたわらに植えてあげるものをコンパニオンプランツといいます。自然栽培でよく使われる方法です。

 自家栽培したラッカセイは、ほとんどを生のまま塩ゆでにして食べます。
 世の中には、乾燥させた殻付きの南京豆から、いわゆるピーナッツと名のついたさまざまに形を変えた落花生が食べ物として消費されています。他の材料との組み合わせも多様で、チョコレートから柿の種に味噌に黒糖、ほかにも無数のピーナッツの食べ物があり、飽きさせない止めさせない食べ過ぎてしまいがちなものばかりです。

 今回のラッカセイのレシピは、沖縄料理「ジーマミー豆腐」(地豆豆腐)です。材料は手軽にピーナッツバターを使いましょう。調味料の入っていないものを使ってください。

 • 豆乳または水 200ml
 • ピーナッツバター 40g
 • 片栗粉または葛粉 20g

 小さな鍋に材料を全て入れ、よくかきまぜます。片栗粉や葛粉はダマになりやすいので、少量の水で溶いてから入れましょう。
 火をつけ、よくかきまぜ、粘りが出てきたらさらによく練り、艶が出てなめらかになってきたら出来上がりです。適当な器に流し込み、さめてきたら冷蔵庫で冷やします。

 合わせるタレには、味噌だれを選びました。味噌、みりん、黒砂糖を練り、好みの濃さに仕上げています。

ジーマミー豆腐

 胡麻豆腐の落花生版ですね。胡麻豆腐よりもおいしい。


 世界中で食べられているラッカセイですが、アレルギーの原因食物でもあります。ピーナッツアレルギーは重症化しやすく、体質によっては微量でも命に関わる注意すべき食品です。菓子に練り込まれていたり、料理のソース、ピーナッツオイルが油として使われていたり、わかりにくいものも多くあります。

 ピーナッツには複数種類のアレルゲンたんぱく質が含まれていることや、大豆やグリーンピースなどの他のマメ科植物と似たタンパク質を持っており、人によってどちらにも反応してしまうこともあります。

 日本ではあまり目立ちませんが、欧米で特に多く、人口の約1%がピーナッツアレルギーを持つそうです。また、ある欧米の統計では、食物アレルギーを持つ人のうち、ピーナッツ過敏症は30人中26人と高頻度に認められたといいます。

 近年、さまざまな食物に対するアレルギーが言われるようになりました。最近のデータでは、日本の小児の約5~10%が何らかの食物アレルギーを持っているとされています。

 食物アレルギーが増えてきた原因はなんでしょうか。
 多くの研究結果も発表され、次のようなことが言われています。

 空気汚染、抗生物質の多用や化学物質への曝露が増えたこと。
 また、現代の衛生状態が過剰であること。例えば、過度の消毒や清潔な環境での生活で、免疫システムが過敏に反応することがアレルギーを引き起こす原因となります。

 食べ物が原因ということでいえば、腸内環境の乱れが食物アレルギーの発症リスクを高めているとも考えられます。
 腸は、体内の免疫機能の70%を担っているとされ、人の成長に従って腸内細菌が増え、腸内フローラといわれるものが形成されます。その腸で「危険なものには反応する」という訓練を繰り返しながら免疫機能が充実していきます。ところが腸内細菌が少ないと、この訓練が不十分になり、本来は無害な食べ物や花粉にまで反応し、自分の体を攻撃してしまうようになります。

 その腸内環境の乱れをつくっているものとして、食品添加物の摂取が心配され、その研究も進んでいます。日本では、保存料、甘味料、乳化剤、増粘剤、着色料、発色剤‥‥などなど、さまざまな種類の食品添加物を口にする食生活のなかにいます。もちろん中心となる食材への、農薬、肥料、抗生物質、ホルモン剤などの使用も、影響しているはずです。

 2025.10  堀 哲郎

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