大好きな野菜にニンジンがあります。いつも冷蔵庫に入れてある欠かせない野菜です。朝は、季節の緑の野菜といっしょに温野菜にして。ジュースやスープ。煮物や煮込み料理にもやっぱりニンジンです。
このニンジンもいまは一年中出回っていますが、旬は秋から冬にかけてになります。いつでも食べられるようになったころから、ややクセのあるニンジン独特の味があまりしなくなってきたようです。おいしいニンジンは他のものには代えがたい食材、なるべく丁寧につくられた畑のニンジンを選んで食べるようにしています。
ニンジンがなかったら、きっと寂しい食卓になってしまうでしょう。それは味だけでなく色の魅力も。
今回のレシピは、おかずがもう一つ欲しいなという時にニンジンでつくる惣菜です。
「ニンジンのシリシリー」。沖縄の料理で、材料はニンジンと卵、油と塩だけです。
ニンジンは繊切り(千切り)にしますが、ピーラーなど繊切りカッターがあればすぐにできてしまいます。包丁で繊切りにしても、もちろんかまいません。
「シリシリー」というのは繊切りという意味だそうで、繊切り道具を使う時の「すりすり」という音から名前がついたという説もあります。
<ニンジンのシリシリー>
材料は、ニンジン1本に卵1個。
・フライパンを使って、繊切りにしたニンジンを植物油で炒めます。
・焦げつかないように火は強くせず、好みの柔らかさになるまで火を通します。
・塩をします。
・上から溶いた卵をかけます。(卵にも塩少々しておく)
・すぐかき混ぜないで、焦げないように気をつけながらゆっくり全体を合わせ、卵に火が通ったらできあがりです。油は多めの方がつくりやすいです。
これだけのシンプルな料理ですから、出来はニンジンの味に左右されてしまいますが、あっという間にできて、それにしてはとてもおいしいのです。冷めても、次の日でもおいしいです。(アレンジもいろいろとあるようです)
さて、沖縄の家庭には必需品の、野菜の繊切り道具がこれです。
「シリシリ器」。
同様のものは、形は違いますが金属板に穴の空いている調理道具で、西洋には古くからありますし(グレーター)、日本でも身近に見かけるようになりました。沖縄ではずいぶん前からあったようです。なんでも、日本料理では「蜂の巣」とか「けんつま突き」(刺身のつま用)というのがあって、同様の調理道具だそうです。
包丁やカッターよりも材料の切り口が粗くザラついて、味の含みも食感も違っています。
ネットで購入したこのシリシリ器を使って、以前より頻繁につくるようになったのが、「ニンザイ」という山形の郷土料理です。
母がつくってくれた、このあたりではむかしからの料理で、繊切りにした大根とニンジンでつくる炒め煮です。切り干し大根の煮物と見た目もつくり方も同じような料理ですが、生の大根を使い味も食感も少し違ってきます。
母も、母の見よう見まねで覚えたわたしも、大根、ニンジンは包丁で細く切って作っていました。やっぱり切るのがちょっと面倒。それがシリシリ器なら簡単です。
<ニンザイ>
材料:大根、ニンジン、油揚げ
・繊切りにした大根とニンジンを炒めます。
・油は好みの植物油でいいですが、ごま油を少し加えると風味が出ます。唐辛子(鷹の爪)もちょっと入ると味がしまります。
・水は加えないので、焦げないように大根からの水気が飛ばないように、火加減を見ながら炒めます。
・だんだん材料から水が出てきて、炒め煮の格好になってきます。もし大根の水気が少なかったら、すこし水を差してください。
・そこへ細切りの油揚げと醤油を加えます。
・あとは水気がなくなるまで煮ます。鍋に蓋をして、水気がなくなるまでの時間を調節すれば材料の柔らかさも変わります。
できたてより時間をおいた方がおいしいと思います。
切り干し大根の煮物は、だしや酒やみりんをふつう使いますから、このニンザイも最初そうしていましたが、いまは醤油だけの方がおいしいとなりました。できればおいしい醤油で、野菜の甘みと旨味だけでおいしくなるのがいいですね。大根もこれから寒くなるにつれておいしくなっていきます。
では、なぜこれを「ニンザイ」というのでしょう。
山形のこのあたりでも、「ニンザイ」という名称も料理も知らない人が増えているようです。
「ニンザイ」とは何かを以前調べましたら、どうも「煮菜」のようです。山形の中でも、ウチのように大根とニンジンを使ったものを「ニンザイ」と呼ぶところと、インゲンやぜんまいとジャガイモなどでつくったものを「ニンザイ」と呼ぶところもあります。「煮菜」ですから各地で違って当たり前でしょう。
ところがこんな調べ物をしていて、驚いたことに、広島県三原市の郷土料理の中に大根とニンジンの「ニンザイ」とほぼ同じ料理が見つかりました。「煮菜(にじゃあ)」といいます。
料理の見栄えも同じです。その紹介文を転載します。「ニンザイ」の説明とほぼ同じです。
秋の野菜で、早く、おいしく、たくさん作れる煮物のことを「にじゃあ」と言います。 けんつきで突きおろした大根や、人参を油で炒め煮にした煮物のことで、あつあつでも、冷めていてもおいしくいただける一品で、御飯がすすみます。
(三原市ふるさと情報発信事業推進協議会HPから)
著者注:”けんつき”は上記の「けんつま突き」のことか。
手軽な材料で作り方も簡単ですし、切り干し大根の煮物もポピュラーなのですから、日本のどこであれ、この「煮菜」の惣菜を見かけても不思議ではないのですが、なぜかこの山形でも縁遠くなってしまいました。なぜでしょうか。
きっと、包丁で大根とニンジンを繊切りするのが面倒だったからだろうな。
最後に、ニンジンをシリシリしてつくったものをもうひとつ。
「ニンジンの乳酸菌発酵ピクルス」
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