これは、タケノコはタケノコでも、根曲がり竹、姫竹などと称される、ここ山形では月山筍(がっさんだけ)という名前もついている細く小ぶりなおいしいタケノコです。
正確には、竹ではなく笹の若芽。日本原産のチシマザサ(千島笹)という笹で、北海道、本州の日本海沿岸に多く自生し、東北地方や北海道、日本海側の山陰地方などで食用とされています。しかし、自生のものを手に入れるのはなかなか難しいでしょう。栽培された月山筍でも、それは高価で高級食材です。
現在の一般的なタケノコといえば、もっと太いモウソウチク(孟宗竹)となりますが、これは中国から18世紀半ばに、薩摩藩が琉球王国を経由して日本に持ち込んだものだそうで、それ以前はこのチシマザサが日本を代表するタケノコだったようです。
このタケノコは孟宗竹のようなエグミがなく、あく抜きをしなくても食べられます。新鮮なものが手に入ったら、ナイフで皮に一筋切り目を入れ、そのまま網にのせ直火で外の皮が焦げて黒くなるぐらいまで焼き、熱いまま皮をむいて味噌をつけてかじる。これが最高です。
また旬の時期には、細いタケノコがたっぷりと入った味噌汁が、食事処や家庭で食べられます。
話を変えて、もう少し手近なタケノコのこと。子どものころから食べてきたタケノコといえば、中華そばに欠かせないシナチク、正式にはメンマと名のついたタケノコの加工食品が、もっとも手近なタケノコだったでしょう。わたしは中華そばや近ごろのラーメンの類はあまり食べませんが、昔からなぜか中華そばに載ったシナチクが好きでした。
テレビを見ることもあった随分と前のことですが、台湾でのメンマを作っている映像を目にしました。太い、育った竹を使って、野外で茹で、地面に埋めて発酵させる工程でした。それは、いまでは特殊な方法だと思いますが、タケノコ状態ではない大きく育った竹を加工して食べるのかと、まずそのことに驚いた記憶があります。最近あらためて調べてみると、ある程度大きくなったタケノコで作るようで、マチク(麻竹)という日本で知られる種類より柔らかい質感だとか。
しかし、あの硬い竹を食べようとする中国の食文化はさすがです。
メンマは発酵食品の一つでもあるのですね。乳酸発酵させて竹の繊維を柔らかくするという。
発酵に興味があって、昨年、孟宗竹のタケノコを使ったメンマ作りに挑戦してみました。茹でたタケノコを1ヵ月ほど乳酸菌発酵させるのですが、残念ながらそれほどの発酵に至りませんでした。孟宗竹ではなかなか難しらしい。しかし、日本国内の放置され広がる竹林対策としても、国内でメンマ作りをしようとしている会社やプロジェクトがあるようです。
食べ物から離れますが、ジャッキー・チェンたちの出演する香港映画に、ビルの足場が竹で組んであるのがよく出てきます。映画でなくても、中国や東南アジアでは高層ビルの足場にも竹を使うのが普通のようです。
竹は、ある意味すぐれた植物です。竹の育つ国々では古くからさまざまに活用されてきました。具体例を上げたらきりがありません。(個人的には木版画の刷りに使うバレンに張る竹皮・タケノコの皮にお世話になりました)。その多くはプラスチック製や金属類に代わりました。そしてまた、環境云々の中で竹素材が見直しされつつあるようですが、どうなるでしょう。先日100円ショップに、紙ならぬ竹のストローがありました。まあ、そんなに気にするならストロー無しでコップから直接飲めばいいものを、と思いつつ、よくできたきれいな姿なので何か使い道はないものかと手に取り、んー、無いなと、そっと戻して店を出ました。
いま欲しいものがあります。梅干しとかを干すのに使う、竹の平たい大きめの干しザルです。以前は値が張ったものですが、いまはだいぶ安いものもあるようです。なかなか干しザルは他の物に代えが利かないものの、ウチにもいくつかある台所で使う竹製のザルは、すぐに乾くステンレスのザルに日常的には取って代わられています。
さて、いま旬のタケノコを食べましょう。ん、タケノコは「旬」に竹かんむりの付いた「筍」という字ですね。(‥‥また話がどこかにいってしまうのでやめます)
今回は月山筍(根曲がり竹)を使った料理です。もちろん孟宗竹のタケノコ同様、タケノコご飯は欠かせません。
ここで紹介するのは、「タケノコと牛肉としらたきの炒め煮」です。
母が作ってくれていた料理です。牛肉がないときは油揚げで代用したものでした。なにせ父は、肉といえば牛か羊しか食べない人でしたから。貧乏なのに。
「タケノコと牛肉としらたきの炒め煮」
作り方はいたって簡単で、食べやすい大きさにしたタケノコと牛肉としらたきを油で炒め、酒とみりん(もしくは砂糖)、醤油で煮ふくめます。好みで生姜の千切りを一緒に炒めてもいいでしょう。
もちろん、普通のアク抜きしたタケノコでも同様です。
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