さまざまな種類のあるトウガラシの仲間に、辛味のない、シシトウがあります。やはり辛味のないピーマンと同じ分類に入るそうです。
正確にはシシトウガラシ(獅子唐芥子)といいますが、シシトウのどこに獅子がいるかと思ったら。あ〜、これか。先っぽを下から見ると、獅子が大きく口を開けて吠えているように見えるということか。これを獅子の口に見立てたという、そのイメージ力におどろく。(上のシシトウ画像では先が細いのが多く、そのように見えません)
その見かけからは普通は獅子がイメージできないシシトウですが、食べてみると甘くみていたことを後悔するほどの、なるほど獅子がいたというような辛ーいシシトウに当たることがあります。私の生まれ育ったあたりではシシトウを「なんば」と呼んで、子どものころから夏から秋口にかけてたっぷり食べてきました。畑に植えると、とにかくいっぱい収穫できますからね。食べるたびに、1個ぐらいは辛いのに当たって「ヒーヒー」してきたわけで。おいしくてもそれが怖くて、器に盛られた「なんば」のどれを箸で取るかの判断ができるよう、長年見極める鍛錬もしてきたものの、やっぱり油断をしたころに「あっ!」と声をあげるようなことになります。家族で食卓を囲んでそれぞれ黙々と食べているときに、突然一人が声をあげて辛くて涙を流していたりすると、みんな笑い出してちょっと楽しい食卓になったりもします。「日ごろの行いが悪いからだ」なんて言われて。
大きさ? 色? 形? このシシトウを口に入れる前に、辛いか辛くないか判断する方法はあるのでしょうか。
やはりこれを解明しようとする研究者も多くおられます。
高温、乾燥した土壌で栽培されたシシトウは辛味が強く、それはまた種子数が少ないことがわかったといいます。種子の少ない果実の全てが辛くなるわけではないが、辛いシシトウは概ね種子数が少ないそうです。
しかしこれも、外から見たのでは種が少ないかどうかは判断できないですね。
自宅の畑で作ったシシトウで辛いものを口にすることがあっても、スーパーでパックされたシシトウではほとんど辛いのに当たらない傾向にあります。環境の管理が行き届いた畑で栽培すれば、辛いものを少なくできるのでしょう。
さて、このシシトウ、火で炙ってちょっと焦げのいったところを、醤油をちょっろとかけて食べる。うまいです。天ぷらや油で素揚げしたところを塩で食べるのもおいしい。
ウチで昔からよく食べてきたのが「なんば炒り」、シシトウを油で炒って醤油と砂糖、みりんで甘辛く煮たお惣菜。これは、畑でシシトウを作っているその盛りには、食べきれないほどたくさん取れるので、この食べ方がいちばんです。
シシトウばかりでなく、同じようにして万願寺トウガラシや甘長トウガラシ、ピーマンでもやることがあります。
ところで、夏の間に次々にできるシシトウを食べて、少し飽きてきたし、だんだんと実のつき方も減ってきた秋口。シシトウの株についた葉っぱも食べますね。いわゆる葉唐辛子の佃煮というものでしょうか。実の方ともまた違った風味でおいしいですね。
畑で株ごと刈り取ります。それから葉っぱと先の柔らかいところだけをむしり取って、いったん茹でこぼします。水にとってきつく絞ってから「なんば炒り」同様、油で炒って醤油と砂糖、みりんとダシなどで甘辛く煮付けます。
とはいえ、畑で栽培している家庭ならできますが、なかなか八百屋さんで葉っぱだけ売っているのに出合うのはまれなので、作る機会も減っているのではないでしょうか。
資料:「特産種苗 第20号」トウガラシ栽培における果実の辛味変動とその要因 松島憲一
「野菜通信」辛いシシトウが出来る本当の理由
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