このごろは、野菜直売所や道の駅などでさまざまな形や色をしたカボチャを見かけるようになりました。そんな中にも上の画像のカボチャは、あまり見ない品種です。このカボチャは形が面白いので、外国の種を扱っているところから種を購入して畑に植え、この秋に収穫したものです。Long Neck Squash という、西洋ではポピュラーな品種です。
特に手入れもしないのに四方八方にツルが伸びる伸びる、畑を飛び出し土手を通って小屋の裏へ。草むらの中の見慣れないこの色と形に、たびたび驚かされながら、1本の株から10個ほどのカボチャが収穫できました。
これは重さが2.8kg、大きさは50cm弱。大きいものでは5kgほどもありました。
Long Neck Squash ロング・ネック・スクウォッシュ= 長首カボチャと訳せます。ところで、日本の在来種で一部の地域で栽培されている品種に、形は小型で色も違うものの鶴首カボチャというのがあります。やはり同じ仲間のカボチャです。(そう、このカボチャ、鶴首カボチャならぬ白鳥首カボチャと言えそうな形をしています)
さて、このカボチャの種類の仲間分けのことです。身近でも、日本カボチャがどうの西洋カボチャがどうのと耳にすることがあります。何が違うのでしょう、ちょっと調べてみました。
大きく3つに分類されています。分類は世界的な分類ですが、その名称は日本でのものです。
・日本カボチャ(東洋カボチャ)
・西洋カボチャ
・ペポカボチャ
16世紀の日本・九州にカンボジアからポルトガル人によって持ち込まれたのが、熱帯の暑い気候の中米を原産とする「日本カボチャ」。一方、「西洋カボチャ」は南米アンデスの高地、涼しい気候の原産です。
「ペポカボチャ」は北米南部・中米の乾燥地帯が原産で、ハロウィンに使われるオレンジ色のカボチャやズッキーニなどもこの仲間。
戦中戦後の食糧難を経験した人の中には、当時カボチャばかり食べさせられて、カボチャなんかもう見るのもいやだという人が多くいらっしゃいます。そのころは「日本カボチャ」であったと思われます。上記の鶴首カボチャもそうですし、多くの日本在来種は「日本カボチャ」です。真っ黒でゴツゴツした黒皮カボチャなども、以前には見た記憶があります。ただ、多くの「日本カボチャ」在来種は温暖な関東以西が主で、北海道や寒い地方では「西洋カボチャ」を育てていたようです。
その後、昭和40年代から「西洋カボチャ」が人気となり、現在の日本で消費されるほとんどのカボチャが「西洋カボチャ」になりました。
理由は、やっぱりおいしいからでしょうか。「西洋カボチャ」は甘みがあって、栗カボチャとも呼ばれるように、ホクホクとした食味で、天ぷらなんかにはうってつけです。
では、その西洋(欧米)ではどうかといえば、主流は「日本カボチャ」です。今回のロング・ネック・スクウォッシュも、これを短く小さくしたような、このごろよく見かけるバターナット・スクウォッシュも「日本カボチャ」の分類になります。やっぱりその食べようは、ポタージュがもっともポピュラーでおいしいでしょう。
「日本カボチャ」は「西洋カボチャ」ほど甘みは強くなく、しとっりと粘りのあるカボチャです。本来の日本料理では、この「日本カボチャ」でないと味わえないということになるのですね。
海外のカボチャのレシピを見ていて、気づいたことがあります。食材にKabocha Squashという記述がありました。カボチャ・カボチャです。要するに日本で「カボチャ」と呼ばれてる「西洋カボチャ」の品種を使ったレシピです。これまでのカボチャ料理にはない新しいカボチャ料理が楽しめます、というわけです。TENPURAもよく知られてきて、西洋でもホクホクとした「西洋カボチャ」の人気も出始めているようです。
ここまでカボチャを英語ではSquashスクウォッシュとしてきました。しかし、日本ではPumpkinパンプキンが普通です。SquashとPumpkin、どう違うのでしょう。海外でも多くのところでその使い分けに迷っているようです。植物としての名称も、普通わたしたちが使うような意味での「カボチャ」はスクウォッシュのようです。国によっても違いますが、パンプキンとするのはパンプキンパイであるとか、ハロウィンで使うカボチャであるとか、大きめのカボチャに使う場合が多いようです。
日本語となればさらに「南京(なんきん)」「唐茄子(とうなす)」などの別称もあり、それからは中国経由のカボチャの存在も考えられます。
保存性にもすぐれた、「日本」も「西洋」も混乱するほどにさまざまな種類のカボチャは、農耕と食文化の長い歴史の中で世界中を動き回ってきたことを容易に想像できます。
カボチャを使ったレシピもさまざまです。収穫後しばらく置いた方がおいしくなるそうですから、これからの季節、上手に貯蔵して、あれこれカボチャ料理を楽しみたいと思います。
今回の料理は、ロング・ネック・スクウォッシュを使ってポタージュにしました。調理器のハンドブレンダーを使うようになってから、ウチではカボチャといえばもっぱらポタージュとなっています。
《カボチャのポタージュ》
- カボチャ
- タマネギ
- オリーブオイル(またはバター)
- スープストック(または固形スープなど)
- 牛乳
- 塩
- コショウ
カボチャの皮をむき、小さめに切っておきます。
タマネギの薄切りを鍋に入れ、上からオリーブオイルと塩をほんの少し入れ、鍋の蓋をして弱火に掛けます。オリーブオイルと塩ではなくバターでももちろん結構です。半々でも。
タマネギが焦げないように、弱火を保ちゆっくり熱を加えます。
タマネギにしっかり火が通りやわらかくなったら、カボチャを入れ少し炒めます。
そこに、スープストックをカボチャが浸る程度入れます。固形スープと水でもかまいません。スープストックや固形スープを入れずに、水だけでも案外おいしいかったりします。
カボチャの大きさにもよりますが、10分ぐらい煮てカボチャがやわらかくなったら火を止めます。
粗熱を取ってから、ハンドブレンダーを使って、直接鍋の中でペースト状にします。
ブレンダーがなければ、ミキサーを使ってもいいし、フードプロセッサーでも。もちろん正式に漉し器を使っても。なにもなければステンレスのザルで漉すだけでもいいのです。
いったん鍋から出した場合は、鍋に戻し火を入れ、牛乳を加えます。
塩・コショウで味を見ながら、ポタージュの濃さも気に入るように牛乳の量を調整してください。
さらにボリュームが欲しければ生クリームを入れてください。あっさりと牛乳も入れずスープストックだけでもおいしいです。
いつも同じではなんですから、スパイスを効かせてエスニックに仕上げたりします。
今回は、最後に風味付け程度にバターを少し入れました。
ちなみに、このカボチャの種は、下の丸く膨らんだところにだけ入っていて、長い首の方は、均一ないわゆるカボチャのかたい果肉になっています。
このごろよく聞く話では、カボチャがひとつ丸ごとあっても切るのが大変でなかなか食べるまでいかない、ということです。かたいですからね。今回のカボチャはその点扱いやすいです。
ここで、かたいカボチャを切る際の工夫を。カボチャの尻、花がついていた跡の丸いところがあります。そこは果肉が薄くなっているので、先の尖った包丁であれば、そこに刃先を立てるように入れると、側面よりは包丁が入りやすいのです。入れにくかったら、包丁を入れる前に、火箸(いまの家庭にはないですね)や丈夫な菜箸をそこに一度差し込んで穴を開け、その穴に包丁の先を入れると切るのが楽になりますよ。
ことし2015年の冬至は12月22日。風邪をひかぬよう、冬至カボチャ・ポタージュでも食べましょう。
◇〈今回の料理に使った食材の産地〉 2015 / 12
カボチャ:自家栽培 タマネギ:北海道 オリーブオイル:イタリア スープストック:自家製(青森産鶏) 牛乳:山形県山辺町 海塩:オーストラリア 黒コショウ:マレーシア バター:北海道
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