レンコン。蓮根。ハスの根っこ。はすねとも言います。でも、これは根ではなくて地下茎で茎だそうです。蓮の名は花のあとに蜂の巣に似たタネが並んだものができますが、それから「はちす」と呼ばれ、さらに「はす」に転化したと言われています。
レンコンならではと言える、白くきれいに並んだ穴のある姿と独特の食感が、食事の楽しみを増してくれます。正月や会席などでもよく出てくる食材です。
原産地はインド、古くから日本にも伝わっていました。主にレンコンを食用にするのは中国と日本、インドや東南アジアの国々にもレンコン料理があるそうです。北アメリカの先住民も食べていたという記録も残っています。
レンコンではなく、ハスの実となると南米をはじめさらに多くの国々で食されているようですが、残念ながら私自身は食べた記憶がありません。日本でも各地で加工されたハスの実が売られているのですね。こんど手に入れて食べてみようと思います。
ハスの花や高く伸びた緑の茎も食べられるようです。
個人的には、ハスの実は言うに及ばず、レンコンそのものもそう身近な食べ物としては食べてきませんでした。もちろん、天ぷらやきんぴらなどのよくある料理は口にしてきましたが。それが近ごろ年齢とともに和食が多くなってきたものですから、レンコンの食卓に上る頻度が上がってきました。手に入れやすい値段になってきたせいもあるかもしれません。
そんなこの頃のレンコン料理では、レンコンをおろして調理するものも増えました。朝食の粥も、おろしたレンコンをいっしょに炊くレンコン粥が気に入っています。和風でも中華粥でもおいしい。少ない量でもけっこうな粘りが出ます。からだがあったまります。
そのシャキッとした歯ごたえが魅力のレンコンですが、今回のレシピはおろしたレンコンの料理にしました。
季節柄いまタラが出回っているので、タラの切り身にレンコンのすりおろしをのせて蒸してみました。
<タラのレンコン蒸し>
・タラの切り身は器の大きさに合わせて切り、軽く塩をしておく。
・レンコンの皮をむき、すりおろす。
・器にタラを置き、軽く絞ったレンコンのすりおろしをのせる。スプーンでも団子にしてもよい。
・だし汁に醤油、みりんを入れ、沸いたら水溶き片栗粉でとろみをつけ、あんを作る。
・タラに火が通って、レンコンも蒸しあがったら出来上がり。あんをかけ、おろし生姜やゆずをのせて食卓へ。
簡単なわりに、手間をかけた和風料理に見えます。タラの代わりに、他の白身魚、エビなどでもいいですね。
レンコンをおろしただけで、片栗粉など加えなくてもしっかり固まっています。季節や鮮度によっても違いがあるかもしれません。
「蓮華」について少し触れましょう。レンゲソウというのもありますが、仏教で使われる「蓮華」についてです。
字を見ると「ハスの花」となりますが、仏教での「蓮華」は、ハス(蓮)とスイレン(睡蓮)を総称しています。植物の分類ではハスとスイレンは科も違い、異なった植物です。ハスの方は水面のさらに上に丸く水を弾き水玉のできる葉がつき、さらにその上方で花が咲きます。スイレンは濡れて艶のある切れ目の入った葉が水面に広がり、水面上に花も咲きます。ハスの花は朝早く咲き出しすことがよく知られていますが、一方スイレンの花はハスに比べて開花する時間が遅く寝坊すけなので「睡蓮」となったといいます。
古代インド神話では、創造神ブラフマー、維持神ヴィシュヌ、破壊神シヴァが三大神となっています。様々な神話がありますが、四本の手があり、左手の一つでハスを持つイメージが定着しているヴィシュヌの話を。
まだ世界が水に覆われた海だったころ、太陽神ともされるヴィシュヌは水の上でとぐろを巻く大蛇王アンタナの上で横になり、長い長い間まどろみ眠っていた。やがてヴィシュヌのへそからハスが生じた。そのハスから創造神ブラフマーが生まれ、世界が作られ、さらにそのブラフマーの額から破壊神シヴァが生まれたとされています。
維持神ヴィシュヌは、創造と破壊を繰り返していくこの世界のバランスを取り「維持」していく神ということになります。
その後の仏教の「蓮華」では、「蓮は泥より出でて泥に染まらず」などのことわざに表されるような、泥のような俗世に生まれても「仏の悟り」に達することを、美しい花を咲かせる蓮の姿に重ねたものとなります。
いまはヴィシュヌに戻ります。維持神ヴィシュヌは、世界の秩序や正義、善を維持しようとする神です。現にいままさに世界は、悪や混沌に満ち、新たなテクノロジーや愚かしい高慢な人間の力に支配されようとしている危機の時です。ヴィシュヌならこの事態を救ってくれるでしょうか。
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