ベランダや部屋の窓際で水耕栽培をはじめて2年目。この夏から、ミニトマトを育てている。料理に使うハーブの栽培を目的にはじめた水耕栽培だが、調べてみると水耕栽培の定番はミニトマトといえるほど、水耕栽培に向く作物らしい。大きな設備で環境さえ完璧であれば、1本のミニトマトの株が、大木となりそこから1万個のミニトマトを収穫することもできるという。
それではと、今年の5月ミニトマトの苗を2本買ってきて栽培をはじめた。目標は1本の株から100個のミニトマトを収穫することだ。
畑でもトマトを育てたことはなく、初めての栽培。やってみて、トマトの生命力にとにかく驚かされた。
脇芽を切って水に差しておけば、まもなくその茎から根が生じ、成長をはじめる。あいにくの強風で「く」の字に折れてしまった茎も、添え木をして紐で止めてまっすぐにしてやれば元気なままだ。
手入れ作業の途中で誤って折ってしまった芽から成長した株も加わり、都合5本の株を栽培することとなった。
もうひとつトマトの生命力と神秘的な力とさえ感じたものが「葉露」という現象。まだ1メートルにもならない若い株のころ、夜遅くから明け方にかけてほぼすべての葉先に大粒の露が生じる。元気な根が勢いよく水を吸い上げている証拠だ。風がなく日中と夜の温度差があるときに付くのだという。野外の雑草も夜露を葉先に付けているから、特別な現象でもないけれど、無数の水滴が夜の照明でキラキラと輝き、それは美しいのだ。
通常、露地物のトマトでは脇芽を摘んで成長をコントロールするが、ウチでは混み過ぎた葉を取るぐらいであとは成り行きまかせ。枝葉の成長もたくましく、支柱やネットに絡みながらベランダの天井に届き、さらに横に下にと成長を続ける。9月になった現在は3メートルはゆうに越している。想像以上の伸びようで、ベランダに緑のカーテンが出来上がった。
さて、肝心のトマトの実も、7月から収穫をはじめて3ヵ月、1本の株から目標のほぼ倍の数を収穫できた。実が割れてしまうほど完熟してから収穫したトマトは、とても甘くておいしい。
トマトもミニトマトも、生でサラダで食べるのはもちろんおいしい。しかし、輪切りに厚く切り、オリーブオイルでフライパンで焼き、塩コショウした焼トマトが大好きだ。パスタも、新鮮なトマトとバジルだけのシンプルなものはとてもおいしい。トマトは熱を加えた方がおいしいと思う。
普通のトマトはさまざまに料理して味わえるが、ミニトマトはなかなか加熱する料理のバリエーションに乏しい。
ずいぶん前になるが、そんなことからミニトマトを使った簡単でおいしい料理を探して作るようになったのがこれ。「ミニトマトとオリーブのピラフ」。
《ミニトマトとオリーブのピラフ》
米……………………2合
ミニトマト…………1パック
オリーブ……………10粒ぐらい アンチョビのスタッフド・オリーブ
にんにく……………1片
塩……………………小さじ1弱
コショウ……………少々
オリーブオイル……大さじ1
粉末または固形ブイヨン……固形であれば砕いたもの。好みで適量を
アンチョビのスタッフド・オリーブというのは、オリーブのタネを取り除きそこにアンチョビのペーストを入れたもの。瓶詰めや缶詰で売っています。ひとつを3等分にして用意してください。もちろん普通のオリーブでもおいしくできます。
ミニトマトはへたを取り、そのまま使います。
にんにくは皮が付いたまま叩いて軽くつぶします。炊き上がったらにんにくは取り出すので皮付きのままです。
塩はブイヨンの量にもよりますから加減してください。
作り方はいたって簡単。
炊飯器やいつもご飯を炊く鍋に、研いだ米を入れます。
水加減はトマトの水分もありますから、いつものご飯より少なめ。
塩、ブイヨン、コショウ、オリーブオイル大さじ1を加えて軽くひと混ぜします。
上にミニトマトとオリーブ、にんにくをのせます。
あとは普通に炊きます。むらして炊き上がったら、にんにくは取り除き全体を混ぜて出来上がりです。
もう少し手間をかけるのならば、先にタマネギのみじん切りを炒めたところに米を入れるとか、水ではなくスープストックで炊きます。バターを使うのもありますね。
しかし、これはごく手軽でさっぱりとした炊き込みご飯というのが魅力なので、簡単な作り方にしました。ただ材料を入れて炊くだけです。
こういった洋風の、そしてエスニックな、もちろん和風の炊き込みご飯は大好きで、この季節には栗ご飯に栗ピラフ、おいしいです。
米料理といえば、黄金色に実った稲の刈り取りがはじまりました。
農家にとっては1年でいちばんうれしい収穫の季節。しかし今年は、農家の表情は暗く喜びはない。
先日、2014年産米のJAの買い取り価格(概算)が発表された。東北ではほとんどの銘柄が2013年産の価格より20%〜35%もの大幅下落。大暴落である。ちなみに山形産「はえぬき」は、1俵60キロあたり2013年産11,000円が2014年産は8,500円に、2,500円(22.7%)の下落。これはまだいい方で、多くの銘柄が過去最低価格を更新した。
減反補助金などの交付金も減額されている。消費税も上がり、生活にかかるお金だって上がっているのに、もちろん資材や機械は上がる。これでは米農家の経営は成り立ちようがない。
山形のある農家のブログ記事を転載させてもらう。
ぼくのニワトリは空を飛ぶ — 菅野芳秀のブログ
TPPの先取り —絶望的なコメの安値 2014.09.25
今から30年前の1984年(S59年)、一俵あたりの農家の売渡価格は平均で18,668円だった。自主流通米では22,000円ぐらいだったと記憶している。それが仮渡価格とはいえ今年は一俵あたり8,500円。一年後の「精算金」を含めても1万円を超えることはないに違いない。
一方、今年の2月に農水省は米の2012年産(H24年産)の生産費を発表した。その全国平均が1俵/60kgあたり15,957円。今年は油代の高騰もあってもう少し高くなるだろうが、それを8,500円で販売しなければならない。
仮にその生産原価に含まれている36%分、5,744円の労働費をゼロにしたとしても、今年の販売価格には遠く及ばない。農家が一年間のタダ働きしたとしても追いつけない安値。これでどうやって暮らしていけるというのだ。「首をくくる」しかないではないか。
その背景に、山形県米生産量のほぼ倍に匹敵する年間80万トンの輸入米がある。GATT-WTOで約束させられたものだ。TPPの締結はこの傾向を更に増大させ、6,000円代にまで米価を押し下げるだろうと言われている。これに対応できるのはごくごく限られた条件をもつところ以外になく、日本の米作りはほぼ壊滅だろう。私がTPPの先取りだと言った理由はここにある。自民党安倍政権の「成長戦略」が農業を滅ぼして行く。
これでは震災の復興どころか、「瑞穂国」も消えてしまいそう。
せっかくの料理もすっかり冷えてしまったようだ。
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