ズッキーニ 〈98号 #36〉

ズッキーニ

 ズッキーニ。いつのころからか、日本でも一般的な野菜になってきました。
 キュウリの仲間のような姿ですが、カボチャの仲間です。このごろは黄色く丸いのも見るのでなるほどと思います。カボチャと同様に中南米が原産らしいですが、よく料理に使うヨーロッパでも、普及したのは20世紀になってからだそうです。
 山形のこのあたりでも、畑に何本か植えてあるのを車からでも目にします。勢いよく育つ株に黄色い花が目立ちます。この花も食べられます。数年、植えてみました。元気よく花が咲くまでは育つのですが、なかなかうまく受粉ができず、思ったように実が成熟していかないのです。株の数が少ないしミツバチの働きも少ないからか、どうしても人工授粉が必要になります。畑が遠くて頻繁に行けなかったり、朝早くは苦手とあって、結局あまり収穫できずにやめてしまいました。

 ほとんど欠かさない夏野菜のひとつ。手軽な調理で食べられます。フライパンで焼く、網焼き、蒸し焼き、細く切ってオムレツに。
 なんといってもおいしいのはラタトゥイユでしょう。夏野菜のシチュー。

 レシピもさまざまですが、材料として一般的にはトマト、タマネギ、ズッキーニ、ナス、パプリカ(ピーマン)、ニンニク、そしてオリーブオイル。塩コショウ。
 今回は、冷蔵庫にあったセロリ、それにハーブとしてベイリーフ。白ワインも少し入れました。
 作り方は、食べやすい大きさに切った野菜をオリーブオイルで炒め、トマトと塩を加えて、野菜の水分だけで煮込みます。かさも減って煮詰まってきたら、塩コショウで調整してできあがりです。
 ウチでは細かな手順や材料もその時々で変わります。今回のようにセロリや緑のピーマンが入ったり、カボチャが入ったり。トマトは皮を湯むきしたりしなかったり、トマト缶になったり。
 どうやってもおいしいですが、焦げないようにだけは注意します。油の量、火加減、鍋の蓋をしたりずらしたり外したり。野菜によって水分も違うし、野菜のやわらかさも好みがありますから。

「ラタトゥイユ」

ラタトィイユ

 できあがったら、冷蔵庫で一晩休ませた方がおいしい。
 ラタトゥイユにカマンベールチーズ、カンパーニュかバゲットのフランスパン。おいしい朝ごはんです。
 パスタのソースにしてもおいしいです。今回は温かいラタトゥイユをクスクスで食べました。
 ちなみに、クスクスはデュラム小麦粉を1ミリほどの粒状にした、パスタの一種ともいえる主食です。北アフリカ発祥でフランス、イタリアなどのヨーロッパ、ブラジルなどでも食べられるようになりました。このごろ輸入食材店で見かけるようになり、気に入っている食材です。


 さて、世界中を怖がらせている新型コロナウイルス感染症によるパンデミック。「ステイホーム」「ソーシャルディスタンス」「リモートワーク」に「テレワーク」‥‥、聞きなれない、新しい言葉も多く耳にするようになりました。
 「エッセンシャル・ワーカー」という言葉も知りました。医療・介護従事者、配達の人、運転手さん、ごみ収集の人、掃除の人、お店でレジを打つ人、公務員‥‥。ステイホームでもリモートワークであっても、街では社会生活を維持するうえで不可欠な仕事に従事している人たちがリスク覚悟で働いている。感謝。
 一方で、この社会が抱えている歪み、悪意、病、不条理が露呈した。さすがに気分も落ち込みがちになる。このパンデミックをきっかけに、もう少し健康的な地球に社会に向かっていくことはできなないだろうか。


 世界中の食料の生産、流通の落ち込みが、どう私たちに影響してくるだろう。
 この間の食に関するニュースから。
 フランスの農業担当大臣が、3月下旬、この感染症禍の影響で失業や仕事のできなくなった人たちに、農作業や農産物加工の仕事をしてみませんか、とテレビ・ラジオで呼びかけたそうです。
 フランスは、食料自給率120%以上(カロリーベース)の農業国ですが、アフリカなどからの外国人季節労働者に頼るところも多く、人の移動が難しくなった現在、働き手不足が深刻です。そこで政府が、スムーズに農業従事へシフトできるようシステムを作ったわけです。およそ2週間で、確保できなかった外国人季節労働者の20万人を上回る数の応募があり、政府は5000人の担当者体制で業務調整を進めているといいます。(日本農業新聞 2020.4.11 ほか)
 収入が途絶えた人たちの仕事ができ、畑で朽ちてしまったかもしれない作物も消費者に届くでしょう。このような政府、市民の対応の早さに感心します。
 食料自給率40%(カロリーベース)にも満たないとされる日本の農業。外国の生産量が減り、国内消費重視で日本への輸出も減り、頼みの外国人労働者も日本に来なくなったらどうするのですか。このフランスに似た事業も、一部JAや自治体で始まったようです。あ、もちろん日本の政府に期待はできません。


 家で料理を作って食べる人が増えました。しばらくぶりに押入れからミシンを出してきて、マスクや着るものを自作する人も増え、手芸店の売り場は欠品の表示ばかりでした。忘れかけていたことを「コロナ」が思い出させてくれたようです。消費だけではなく、身近なものを自ら作りながら生きていくことを。畑を始める人も多くなるのではないでしょうか。


 2020. 6  堀 哲郎

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