ダイコン葉 〈107号 #45〉

ダイコン葉

 これから冬に向かってダイコンのおいしい季節になります。ダイコンの葉は食べていますか。一般的なスーパーマーケットでは、葉の付いたままのダイコンは見かけないかもしれません。自家栽培か畑近くの直売所でもないと、手に入れられないでしょうか。葉がついたままでは、かさ張るし、ダイコンそのものの鮮度も悪くなりますからね。流通には不都合だし、わざわざダイコン葉を調理して食べる機会も減ってきたことでしょう。でも、葉っぱも食べたいですね。おいしいと思いますよ。
 この画像のような、ダイコンの葉っぱだけでも手に入れられます。大根菜と名前のついた品種も用意されていますし、ダイコンのおろ抜き(間引き)をした葉も売られています。

 ダイコンの葉っぱは、ミネラルやビタミンが豊富です。栄養価の高い野菜としても、食べないのはもったいのない話です。また、暑い季節を過ぎてからの栽培ですから、病虫害も少なくなり農薬の使用も抑えられた作物です。虫食いの葉っぱの付いたダイコンを選びましょう。

 日本のものと同様の白くて長い種類のダイコンは、中国やインドでもよく料理に使われます。特にインドでは冬の野菜として、さまざまに調理され食べられています。われわれならダイコンのカレーというような料理も一般的です。では、インドでは葉っぱも食べるのかというと、やっぱりしっかり食べます。ダルと呼ばれる小粒の豆をひき割りにしたものとスパイスを使った、ダイコンの葉っぱの炒め煮。また、そのお隣りパキスタンでも、若い葉をいったん湯がいて、ニンニクやショウガ、トウガラシなどスパイスと炒めて食べるようです。

 今回レシピとしてあげるのは、このあたりでよく作る「ダイコン パ」の炒め煮です。ほかの地方でもまあ一般的な食べ方ではないでしょうか。インドやパキスタンとは調味料やスパイスが違うだけで同じような料理ですね。

「ダイコン葉の炒め煮」

ダイコン葉の炒め煮

 ダイコンの葉は栄養価は高いですが、シュウ酸(アク)が多く、一度茹でてアク抜きが必要です。
 小さめに切ってからたっぷりのお湯である程度柔らかくなるまで茹で、水にさらします。大きく育った葉は硬くなってきますから、茎の下の方や大きな葉の先は捨てるとか、おいしそうなところだけでも結構な量になります。

 水にさらした葉を絞って油で軽く炒めます。トウガラシも適宜入れましょう。
 油揚げの細切りを加えます。
 調味料を加えます。醤油、みりんか砂糖。水分の量によってはお酒か水を少々足す。
 箸を動かしながら、汁がほとんど出なくなるまで火を入れます。出来上がりです。

 大きく育ったダイコン葉は、根元で切っていったん陽に干してから、戻し、調理することもできます。
 昔から畑のある家ではこういった葉っぱの野菜は、なかなか食べきれない量が採れますから、作り置きの惣菜として同じように調理をして食べてきました。日本の田舎料理には油揚げが欠かせません。さらに加えるならコンニャクでしょうか。ここらあたりではそれに打ち豆(大豆を平らに潰したもの)とかですね。


 これは多くの方がご存知の食べ方でしょう。でも若い方はあまり食べてないかもしれないので取り上げてみました。
 日本の円安はさらに進んでいます。
 一般食料品はもちろん、野菜も、地元のものはそうでもないですが、少しずつ上がっているようです。いつも見ている農業に関する情報では、ついに輸入ものが国内産の野菜の価格を上回ったとありました。家計にも響きますが、外食産業などでは安い輸入ものがあって維持できていたこともあるので、そのあたりでも影響が出てくるかと思われます。大量に消費する外食産業が高くなった輸入ものから国内産の食材に変えると、メニュー価格が上がるだけではなく国内産野菜の品薄そして国内産食材価格がさらに高騰するということになります。自給率の低い日本ですから、それでも高値になった海外産の食材を他の国と競争しながら手に入れないと食べるものがなくなります。

 小麦では、輸入品から国産へのシフトは生産段階からその動きは顕著になっています。国でも、米の栽培から小麦や大豆、ソバへの耕作転換を勧め始めました。んー、これもよくわからない話です。米農家がやっていけるだけの価格にして、しっかり米を作ってもらって、家庭でご飯を食べていけばいいだけのことと思うのですが。その上で、小麦もソバも耕作量を増やしていくことはとてもいいことだと思います。

畑地化支援対象に麦、大豆、ソバ 10アール1・5万円を5年間 農水省調整
(日本農業新聞 2022年10月27日)
https://www.agrinews.co.jp/news/index/112756


 ダイコンの葉もおいしいですから、虫もいっぱい付いて穴だらけのものがあったら、それこそ運が良いと喜んで調理して食卓に上げましょう。ヨーロッパの現在の状況などを見るにつけ、ダイコンの葉とはいえまだ食べられるものを捨てているなんていうことは、いつまでできるのかと思わされます。

 2022.10  堀 哲郎

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