キクの花/もってのほか 〈96号 #34〉

キクの花/もってのほか

 花を食べる。野菜の花でいえばカリフラワー、ブロッコリー、ミョウガなどはよく口にする花です。カボチャ、ズッキーニ、オクラの花も食べられます。ここ山形や北国の地域で「食べる花」といえばやはりキク(菊)でしょう。上の画像のキクは山形で「もってのほか」と名前のついた食用菊です。新潟では「カキノモト」というそうです。元は中国から渡ってきたもので「延命楽」という、なんともありがたい名前がついています。

 食用菊の生産高データを見ると、一番多いのは愛知県産の小菊になっています。刺身のツマなどとしてよく見る黄色い小さな菊です。あれを食べることはほとんどいないでしょうが、山形で菊といえば食べるためのキクです。キクの花弁だけをおひたしにするなどしてたっぷりと食べます。添え物の扱いではありません。この「もってのほか」は、一般的な黄色いキクが終わったあと、やや遅れて収穫されます。おいしくて人気の高い品種です。大輪の観賞用の菊でも見られるように、「もってのほか」の花弁は管状になっています。それでシャキシャキと独特な食感が楽しめます。

 このあたりのお宅の畑には決まってキクが植えてある畝が一列はあって、緑の野菜もほとんどなくなってきた初冬の畑に花を咲かせています。さすがに根雪になるころには葉も枯れてくるものの、多年草ですからまた翌年芽を出してくれます。

 毎年、ウチでは食べきれないほどのたくさんのキクをもらいます。和洋あれこれ料理に使ってもみますが、酢醤油で食べるおひたしが定番でしょうか。キクの香り、ほろ苦さにわずかな甘みもあって、おいしいものです。春菊の葉と合わせたおひたしも大好きです。
 おひたしは花弁だけを食べます。天ぷらは花全体を揚げて食べます。じつはキクの葉っぱの天ぷらがおいしいのです。自宅でキクを育てていないと、食べる機会はないかもしれませんね。夏の葉っぱを食べます。
 地元は白鷹町のイタリアン・レストランで食べておいしかった料理に、「食用菊とカニのペペロンチーノ」があって、下のカニのパスタが見えないほどキクの生の花弁が盛ってありました。花弁は生でも食べられます。


 キクの花弁をはずすのは子どものお手伝いでした。むかしのはなしです。ザルいっぱいの花弁を大きな鍋のお湯で茹でます。
 母から教わったやり方にわたしなりの改良を加えて、その方法を紹介します。

 大きめの鍋にお湯を沸かし、食酢を入れます。湯1Lあたり大さじ1ぐらい。花の色をきれいに茹であげるためです。
 グラグラに沸いたお湯をいったん止め、キクの花弁を入れます。沈まずに浮いたままですから、菜箸などで湯の中にくぐらせます。しっかり湯に浸かってある程度熱が入ったら、大きめのザルにあげます。鍋が小さくてあまり熱が入らないようなら、火をつけて熱くしてください。
 すぐザルごとボールの冷水の中に浸し、流水で冷まします。水の中でキクが片寄らないようほぐし、静かにザルごと水から上げます。
 ここでよく葉物のように手で絞る方がいますが、キクは絞ってはいけません。水から上げたザルのまま、水が下に落ちるのを待ちます。お皿に移したり食べる時は、ザルのキクを菜箸でほぐすようにしながら少しずつ取ります。薄い花弁の食感をだいじにしたいがためのやり方です。

もってのほかのおひたし

 「もってのほか」という名前はなぜついたのでしょう。
 諸説あるようですが、「もってのほかおいしい」からというのは昔から聞いています。「予想を越えてとんでもなくおいしい」という意味でしょう。
 また、中国では「延命楽」というのですから、その効能もあるのでしょう。日本でも効能や栄養素の研究がされ、注目されているとのことです。


 話は変わって。いま、日本の国会、マス・メディアでは安倍晋三総理の「桜を見る会」の疑惑追及で大騒ぎをしています。言葉の通じない政治家と、すべて記録がないことにしてしまう官僚に呆れ果て、、、。いったい何がこの政権を長らえさせているのでしょう。そう、もうなかったことのようにされている安倍政権の同じような“大騒ぎ”が、少し前にありました。このページでは2018年3月号「大豆」のときに書いた、「森友学園」と「公文書改竄」の問題、そしてその裏で“粛々”と可決された「主要農作物種子法廃止法案」いわゆる「種子法」のときです。
 新聞・テレビのいうことを鵜呑みにしない方は気付いているかと思いますが、今度もこの“大騒ぎ”(桜に加えて芸能人の薬物)の裏で“粛々”と進んでいることがあります。
 日米FTA。正式名称は「日本とアメリカ合衆国との間の貿易協定」。関税の撤廃や引き下げを行い貿易の自由化をする、FTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)と呼ばれます。一部ちまたでは「売国条約」ともいわれます。


 日米貿易協定は12月3日の参議院外交防衛委員会で可決された後、4日の参議院本会議に上程され与党などの賛成多数で可決、承認された。日米両政府は2020年1月1日に発効させる方針で新年からすでに発効しているTPP11、日欧EPAに加えてかつてない農産物貿易の総自由化に突入する。コメなどは除外されたがさらなる協議が予定されており、米国から農産物のさらなる自由化協議を求められる可能性も否定できない。
(中略)
 日米貿易協定とTPP11をあわせた農林水産物の生産減少額は約1200億円から約2000億円と試算。しかし、対策を講じるため生産量や食料自給率は変わらないと政府は説明している。関税撤廃で輸入増となった食料はどこに行くのだろうか。
(農業協同組合新聞 電子版 2019.12.7)


段階的にではありますが、食肉、乳製品、果実類、麦のほか農産物、ワインなどの関税が削減、撤廃されていきます。

 “今後の協議次第”では自動車・自動車部品などの工業製品、さらには医療保険、社会保障などの社会システムにも及ぶことも懸念されています。
 また、これは条約ですから、日本の国内法より優先されます。したがって、アメリカからさまざまな項目について自由化を要求されたら、国内の産業や家計を守るために作られた法律も、条約に沿ったものに変えてでも、応じなければならなくなります。勝手にやめるわけにもいきません。

 日本に先んじて、韓国が2007年に米韓FTAを締結しています。韓国からは、あまりにひどいその内容に(「毒素条項」といわれるようになった尋常でない縛りがある)、米韓FTAへの非難が続いています。それを見ても、これは「自由貿易」には程遠いまさに「不平等条約」です。

 信用のおけない政治家たちの政党に政府、まともに説明もしない官僚なのに、この先どうなっていくのかも見えないこんな条約にサインをされてはたまったものではないのです。
 「もってのほか」です。


もって‐の‐ほか【以ての外】 [名・形動]
1 とんでもないこと。けしからぬこと。また、そのさま。
2 予想を越えて程度がはなはだしいこと。また、そのさま。
(デジタル大辞泉)

 2019.12  堀 哲郎

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