アケビ 〈79号 #19〉

アケビ

 秋の味覚、アケビ。
 いつもこのページでは、野菜などの食材をとり上げ、そのレシピを紹介しています。そこにアケビ。これは食べ物ではないと思われるかもしれません。割れたアケビの実の黒い種のまわりを覆う、あの半透明のあやしげなものは、子どものころ口にしたことがあり、それが甘いことは知っているけど。そうおいしかったとは思わないし。
 しかし、ここ山形では大人が食べるのです。大人しか好んで食べないかもしれません。アケビの実の中の種のまわり(胎座と呼ぶようです)ではなく、外側の皮の方です。山形独特の食文化です。近くにアケビの蔓があって、おいしそうなアケビの実がついていたら、採ってきて食べますし、街なかの店にだってきれいにパックに入れられて並んでいます。
 お店で売られているアケビの多くは、自生しているものではなく栽培されたものです。全国生産高は150トンといいます。そのほとんどが山形県産ということです。アケビの150トンは多いのか少ないのかはよくわかりませんが、多くの家庭で食されていることは確かです。
 きれいな色に熟した、でもまだ割れていない上の写真のようなアケビがおいしいようです。

 アケビは漢字で木通、または通草と表します。原産地は日本や中国、台湾、韓国など東アジア。中国でも木通と表記するようですが、やっぱり中華料理にもアケビはあるのでしょうか。漢方薬としては利用されています。

 さて、どのようにして食べるかです。
 もっとも一般的な料理は、アケビの詰め焼きとでもいうでしょうか、アケビの中身を抜き(中身はふつう食べません。捨てます)、中に詰め物をしてフライパンで焼くというものです。中の詰め物は、ひき肉と舞茸などを味噌と砂糖・みりんで炒り付けたもので、アケビに詰めたあとは、かんぴょうで結びます。フライパンに油を熱し、しっかり火が通るまでフタをしてときどき返しながら焼いていきます。
 でも、ウチではこの調理のしかたではありません。ここで紹介するのはもっと簡単にできるアケビの味噌炒めです。アケビとあわせる食材はレシピによっていろいろですけれども、これは私のおすすめのレシピです。


《アケビの味噌炒め煮》

アケビの味噌炒め煮

アケビはやや大きめに切ります。小さいと煮くずれてしまいますので。
牛肉の薄切りは小さめに。
ゴボウは薄めの笹がき。
ミョウガは縦にいくつかに切ってください。
味噌、砂糖、みりん、酒は、適当な器の中でよく混ぜ合わせておきます。

まず、フライパンか厚手の鍋に油を熱し、火の通りにくいゴボウを炒めます。
ある程度火が通ったら、つぎは牛肉を加えて炒めます。
つづいてアケビを入れて炒めます。
アケビはあまり炒めすぎないようにして、最後にミョウガを加え、混ぜ合わせておいた調味料を入れ全体を絡めます。
そのあとさっと煮付けたいので、水分が少ないようなら酒か水をすこし加えて加熱します。
出来上がりです。

茄子の味噌炒めとか、あのような調味と手順です。
全体にやや濃いめの味付けがいいでしょう。
アケビの時季はちょうどミョウガの盛りで、いつもあわせて使うのですが、入れなくても構いません。


 さて、アケビを口にしたことのない人は、どんな味と想像するでしょう。山形でしか食べないようなアケビっておいしいものなの? おいしけりゃほかの所でも食べているはずでは?
 でも、おいしいのです。たしかに、子どものころはこの料理おいしいとは思いませんでした。大人になって食べたアケビは実においしいのです。
 一言でいえば、にがいです。このにが味がいいのです。したがって、日本酒とまた合うのだそうだ。秋の集まりごとの宴には、きまってアケビの詰め焼きが膳にのぼるのです。

 にがいたべものといえばゴーヤがあります。ゴーヤも夏になるとあのにがみに惹かれて食べるのですが、なぜかこのごろのゴーヤはにがみが少なくなってきました。それはともかく、いまでは、にがいゴーヤも多くの人に食べられるようになったのですから、きっとアケビも多くの人がおいしいと感じるに違いありません。もしアケビを見つけたら、一度挑戦してみてください。

〈今回の料理に使った食材の産地〉 2015 / 9
アケビ:山形市 牛肉薄切り:山形県 ゴボウ:山形県 ミョウガ:山形市 (グレープシード・オイル):イタリア 味噌:山形県大江町 砂糖(甜菜糖):北海道 みりん:愛知県 :山形県大江町


 堀 哲郎

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