アサツキ<浅葱> 〈69号 #09〉

アサツキ<浅葱>

 雪国の早春の野菜であるアサツキ。ネギの一種です。
 もちろん雪国に限った野菜ではありません。しかし、待ちわびた雪融け、春を象徴する食べ物です。

 まだ雪の残る北国でも、いまはビニールハウスで栽培されたさまざまな野菜が店先に並びます。そんなビニールハウスのなかった頃から、このアサツキは最も早い春の野菜として出回ります。まだ雪の残る畑から、土の中から芽を出したばかりの、浅い緑の葉の寸法も短い若いアサツキを掘り出します。
 さっと茹でて、酢味噌和えやおひたしとしていただきます。

 アサツキは、江戸時代の書物などにも、ひな祭り(陰暦の桃の節句)のお膳にはまぐりやあさりなどの貝といっしょに酢味噌和えにして供するとあります。
 古来、春の来たことを喜ぶ食べ物です。

 また、もう少し寒い時季に戻りますが、山形市の初市(お正月の市)では、縁起物としてこのアサツキが売られます。雪の中から掘り出したものですから、短い葉も緑ではありません。淡い黄色い葉先で白い立派なひげ根がたっぷり付いた株です。「白鬚(しらひげ)」と称して売られます。
 春を呼ぶ食べ物であるとともに、長寿を願っての縁起物として、露店で初飴や小正月の団子木とともに並びます。

 アサツキの豊かなひげ根を見ると、冬の深い雪に覆われた土の中で、しっかり根を伸ばし、今か今かと春を待ちわびて息づく植物の力を感じることができます。


 さて、このひげ根は取って、茹でて酢味噌和えにしましょう。
 店頭のアサツキはすっかりひげ根を取って売っています。今回は近所の農家の方にわざわざひげ根をきれいに残したまま分けてもらいました。


「アサツキとはまぐりの酢味噌和え」

 まず酢味噌を作ります。
 味噌に砂糖を入れ、酢を少しずつ加えながら適度なゆるさにします。途中、みりん(煮切り)も少々。できればすり鉢を使うのがいいですが、ただ混ぜるだけでもいいと思います。
 アサツキは熱湯でさっと茹で、水には取らず、ザルの上で冷まします。
 食べやすい大きさに切って、酢味噌と和えて出来上がりです。
 今回は、酒蒸しにしたはまぐりのむき身をいっしょに加えてみました。


 アサツキの少し青臭い甘みがおいしい。春の香りです。

アサツキの酢味噌和え
─── これでまる二年が経ちました。
 堀 哲郎

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